飛島村
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「日本一お金持ちの村」と聞いて、どんな場所を想像しますか?
愛知県海部郡飛島村(とびしまむら)。人口わずか約4,500人、面積22.42平方キロメートルの小さな村が、自治体の財政健全度を示す「財政力指数」で何年も連続全国1位を記録しています。その指数は2.15。2位の茨城県東海村(1.69)に大きく差をつけ、日本で唯一2を超える超リッチな自治体です。
潤沢な税収は住民サービスにこれでもかと還元され、子ども医療費は18歳まで無料、出産や入学のたびに10万円の祝金、中学生はアメリカにホームステイ——。「こんな村に住みたい!」と思うのは自然なことですが、実はこの村、住みたくても簡単には住めません。
日本一裕福な村のリアルな暮らしと、移住の壁を詳しく見ていきましょう。
なぜ日本一裕福なのか——臨海工業地帯という金脈
飛島村の豊かさの秘密は、村の南部に広がる臨海工業地帯にあります。
名古屋港の一角を占める飛島村南部には、中部電力の西名古屋火力発電所、川崎重工の名古屋第二工場、三菱自動車の名古屋部品センター、さらには国内最大級のコンテナターミナルなど、大手企業の事業所が林立しています。輸送関連会社、倉庫会社、木材関連事業所、鉄鋼関連事業所も集積し、中部地方の物流拠点としての存在感は圧倒的です。
これらの事業所から入る固定資産税が村の税収の柱。2017年度の歳入額は約68億5,000万円で、うち固定資産税だけで約29億4,000万円。人口4,500人の村としては破格の税収です。
ポイントは「税収が多く、人口が少ない」こと。税収を村民で割ると、1人あたりに割り当てられる金額が桁違いに大きくなります。その結果が、他の自治体では考えられないような住民サービスの充実につながっているのです。
昼間人口は約14,000人と夜間人口の約3倍に達します。村外から臨海工業地帯へ通勤する人が多く、「働く場所」としての飛島村と「暮らす場所」としての飛島村は、まったく異なる顔を持っています。
驚きの住民サービス——子育てから高齢者まで
飛島村の住民サービスは、全国の自治体のなかでも群を抜いています。
まず子育て支援。子ども医療費は18歳まで、通院・入院とも自己負担額を村が助成します。これは名古屋市などの大きな自治体が15歳までとしているのと比べても手厚い水準です。
さらに目を引くのがお祝い金制度。出産して1年以上村内に居住すると10万円、子どもが小学校に入学するときに10万円、中学校入学時にも10万円。入学時は何かとお金がかかる時期なので、家計にとって大きな助けになります。
教育面では、村立の小中一貫校「飛島学園」が2010年に開校。愛知県初の公立小中一貫校で、初等部(1〜4年)、中等部(5〜7年)、高等部(8・9年)の4・3・2年制をとっています。英語教育は全国平均より早い小学校1年からスタート。そして中学2年生になると、村の費用で約1週間、アメリカ西海岸にホームステイする海外研修プログラムが用意されています。
高齢者向けの支援も破格です。節目ごとにお祝い金が支給され、90歳で20万円、95歳で50万円、そして100歳を迎えると100万円。ひとり暮らし世帯向けの緊急通報システムや、高齢者・妊産婦へのタクシー料金助成もあります。
結婚祝金も用意されており、夫婦のどちらかが40歳以下などの条件を満たし、6カ月以上村内に居住すると5万円が支給されます。
公共施設も充実しています。「すこやかセンター」は保健センター、温水プール、トレーニングルーム、図書館、児童館、地域包括支援センターの6施設を集約した複合施設。「ふれあいの郷」には天然温泉の日帰り入浴施設もあり、村民はもちろん一般の方も利用可能です。
住みたくても住めない?——市街化調整区域の壁
ここまで読んで「飛島村に引っ越したい!」と思った方もいるかもしれません。しかし、この村には大きなハードルがあります。
飛島村は、臨海工業地帯を除く村域の大半が「市街化調整区域」に指定されています。市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて市街化を抑制すべきとされた区域で、原則として住宅や商業施設の新築が認められません。
飛島村の全体が干拓地や埋立地であるため、平均海抜はマイナス1.5メートル。海抜ゼロメートル地帯が多く水害を受けやすい地形であることから、水路の整備が欠かせず、農地保護の必要性もあって住宅地の拡大が制限されているのです。
市街化区域は8.66平方キロメートルのみ。残りの13.87平方キロメートルが市街化調整区域で、新しい賃貸マンションや分譲地が開発されることはほとんどありません。そのため、村外から転入するのは在住者との結婚などのケースが多いとされています。
ただし、変化の兆しもあります。2016年から2018年にかけて、村は県の許可を得て宅地区域を初めて分譲。45区画に117件の応募が集まり、最大7倍の倍率になった区画もありました。人口減少への対応として、村も少しずつ門戸を広げ始めています。
交通と生活環境——名古屋に隣接する小さな村
飛島村は名古屋市に隣接していますが、鉄道駅はありません。
移動手段は主に車とコミュニティバスです。飛島公共交通バスが近鉄蟹江駅、名古屋市営地下鉄の名古屋港駅・築地口駅、あおなみ線の稲永駅に乗り入れています。名古屋市中心部までは車で高速道路を使えば約40分。伊勢湾岸自動車道の名港トリトン(名港西大橋)が飛島村と名古屋市港区をつないでいます。
村の北部は田園風景が広がる農村地帯。米、麦、大豆のほか、ネギ、ホウレンソウ、ミツバなどの水耕葉菜の産地としても知られ、花卉栽培も盛んです。一部のエリアでは金魚の養殖も行われています。
買い物環境については、村内に大型商業施設はなく、日常の買い物は近隣の蟹江町や弥富市、名古屋市港区の店舗を利用するのが一般的です。車があれば生活に困ることはありませんが、公共交通機関だけでの生活はやや不便です。
飛島村の歴史——伊勢湾台風からの復興
飛島村の歴史は、自然との闘いの歴史でもあります。
愛知県では古くから海を干拓して新田を作ることが盛んで、飛島村もすべてが干拓や埋め立てによってできた土地です。農村として発展してきましたが、1959年の伊勢湾台風では村域の大半が水没。死者132名、住宅の全半壊・流出722戸という甚大な被害を受け、人口の流出が相次ぎました。
しかし転機が訪れます。当時の愛知県知事の計画により、伊勢湾台風の直撃を受けた湾岸に臨海工業地帯の建設が決まりました。1962年から1981年にかけて伊勢湾岸の埋め立てが行われ、造船鉄鋼産業地が飛島村に帰属。次第に裕福な村へと変貌を遂げたのです。
かつての寒村が、災害からの復興を経て日本一裕福な村になるまでの物語。その背景には、伊勢湾台風という悲劇と、そこから立ち上がった人々の営みがあります。
飛島村はこんな人が気になるかも
正直に言えば、飛島村への移住は一般的な意味での「おすすめ」が難しい自治体です。住宅用地がほとんど流通しておらず、鉄道駅もなく、買い物環境も限られています。
しかし、飛島村が教えてくれることがあります。それは「財政力がある自治体に住むことの恩恵」です。子ども医療費の無料化、手厚い祝金制度、充実した教育プログラム、公共施設の質——これらはすべて、豊かな財源があってこそ実現するもの。住む場所を選ぶとき、自治体の財政力は暮らしの質に直結するということを、飛島村は象徴的に示しています。
すみかスコアの経済力指標では、各自治体の財政力指数も評価に組み込んでいます。飛島村のように極端な例は稀ですが、「財政力が高い自治体ほど住民サービスが充実する」という傾向は全国的に当てはまります。住む場所を検討する際、その自治体の「お財布事情」にも注目してみてください。
飛島村に住むための条件・手続き
「どうすれば飛島村に引っ越せるのか」という疑問に、現時点でわかる情報を整理します。
住宅取得・賃貸の現実
前述の通り、村域の大半が市街化調整区域のため、新築住宅を自由に建てることはできません。実際に転入できるケースとしては主に以下が挙げられます。
- 村内在住者との結婚による転入
- 村内企業への就職に伴う社宅・寮への入居
- 村の宅地分譲に応募・当選(不定期実施)
- 既存の中古住宅・賃貸物件の取得(流通数は極めて少ない)
2016〜2018年に行われた宅地分譲では45区画に117件の応募があり、最大7倍の競争率でした。次回分譲の情報は飛島村役場(公式サイト)で告知される見込みです。
住民登録(転入届)の手続き
住宅を確保できた場合、転入の手続き自体は通常の市区町村と同じです。
- 転居後14日以内に飛島村役場へ転入届を提出
- 必要書類:転出証明書、本人確認書類、マイナンバーカード(あれば)
- 国民健康保険・国民年金の手続きも同時に行う
住民登録が完了すれば、子ども医療費無料や各種祝金など、村の手厚いサービスをすぐに受けられます。
移住を検討する際の問い合わせ先
飛島村役場 総務課(0567-52-0560)または村公式サイトで最新の住宅情報・宅地分譲予定を確認することをおすすめします。
まとめ
飛島村は、日本一の財政力を活かした破格の住民サービスが光る、唯一無二の村です。子ども医療費18歳まで無料、出産・入学の祝金10万円、中学生のアメリカ研修、100歳で100万円——。これだけの手厚さを実現できる自治体は、全国を探してもここだけでしょう。
一方で、市街化調整区域の壁により住宅地は極めて限られ、移住のハードルは高い。「住みたくても住めない村」というジレンマを抱えながらも、2016年の初の宅地分譲のように、少しずつ変化は始まっています。
住む場所を選ぶとき、その自治体がどれだけ住民に還元できるかという視点は意外と見落とされがちです。飛島村の物語は、「自治体の財政力」が暮らしにどれほど影響するかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
すみかスコアでは、飛島村を含む愛知県の全市区町村の住みやすさ・防災・安全・経済力・子育ての5軸評価を公開しています。あなたの街の「お財布力」もぜひチェックしてみてください。
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指標の内訳
各スコアは全国1,900市区町村との相対評価です。人口規模を考慮した人口比データで比較しています。